でも今日は
「いつもありがとうございました」と返事が来たのです。
(・・・え?)と思って思わず振り返ります。
ちょうど彼女は他にきていたお客さんにも手を振っている最中でした。
そしてさっき言葉にひっかかる物がありました。
「ありがとうございました」(ました・・・って?)
私「いえいえ。こちらこそありがとう^^」
彼女「少し待っていただけませんか?」
私「はい?」
彼女「これから何かご予定はありますか?」
私「いえ、特にないですけど」
彼女
「もしご迷惑でなければ、私をジュノに連れて行って貰えないでしょうか。」あー、なるほどジュノへの護衛か。
って事は、これからジュノでバザーするって事なのか・・・。
これで「ました」と結んだ理由が分かりました。
いつも安い価格で食事を提供してもらってるので、
こんな恩返しの機会があってもいいかなと思いOKしました。
早速モンクに着替えます。
着替えの最中に彼女からPTの誘いが来て、程なくしてまた一人PTメンバーが増えました。
それは高レベルのナイトの方でした。
(私・・・いらないんじゃ?)
と思ったものの、私一人で万が一の時には、殴る事しか出来ないのでかえって安心しました。
挨拶を交わして、LV5の彼女を囲んでデコボコな即席3人PTが出来上がり。
道を行きながら彼女はバザーの思い出を語ります。
話を聞いている内に、ナイトさんも彼女のバザーの常連さんだという事が分かりました。
ジュノまでは危なげなく・・・のつもりでしたが、
途中でオークに絡まれたりして、そこをナイトさんがナイトらしく敵を片付けたり・・・。
彼女の思い出話に花が咲いた事もあって道中はとても楽しかったです。
恐らくメインキャラがいて、ジュノはきっと珍しくもなんともないだろうけれども、
やっぱりお祝いしたくって「おめでとー!」と言うと/blushしておられました。
「ルルデまで一緒してもらっていいですか?」という彼女に、
ナイトさんも私も一緒に行きました。
ルルデに着いて彼女はある場所まで導くと、
「冒険に付き合ってくださってありがとう」とペコリ。
ナイト:これからはどこでバザーされるんですか?
やはりナイトさんも私と同じ事をお考えでした。
だけど、彼女の答えは意外なものでした。
今日で引退するので、もうバザーはしないということ。
すでにメインキャラは昨夜引退セレモニーをしてもらって、
今いるこのルルデのこの場所でログアウトしたそうです。
びっくりするナイトさんと私。
さっきまで楽しそうにサンドでの常連さんのお話もしていた彼女。
あまりに売れなさそうな場所でバザーをしている事から、
ある常連さんは
「ここよりもモグ前の方が売れますよ」とアドバイスをくれた方もいたとか。
バレンタインの時は高騰したハートチョコを810(ハート)ギルで販売していたそうで、
それを購入した冒険者さんから、
「すみません、誘惑に負けて転売してしまいました」とお詫びの/tellが来た事とか・・・。
初心者さんと思しき人から「いつも安く売ってくれてありがとう」の言葉が嬉しかったとか。
彼女のバザーは、売れることを期待して・・・というよりは、
隠れ家的なお店を目指して、ひっそりとバザーをしていたそうです。
「ロールプレイみたいな物です^^」と仰っていました。
本当は他の常連さんがいれば今日のジュノ行きのお誘いをしてみようと考えておられたそうです。
でも、たまたまいたのが私達だけでした。
それでも彼女は「楽しかった、ジュノは夢ですものね^^」そう言って笑います。
引退はリアルの都合でどうしても避けられず、
とてもじゃないですが「いつか復帰・・・」という事も厳しそうな状況でした。
ナイトさんは
「キャラは削除せずにね。これからフレ登録するんだから。」
と言いました。私も思わず「私もお願いします。」と言って彼女に登録を申し込みました。
「よろしくね^^」
「よろろ〜」
「うん、よろしくー。まさかこの倉庫にフレが出来るとは思いませんでしたよw」
「じゃ、落ちます。」
そういう彼女を引き止める事は出来ません。
何も返事が出来ないままに、彼女はヒーリング体制に入りました。
「またどこかでね!」そんな風に言うのが精一杯でした。
彼女はそれに「はい^^」と答えて・・・そして消えていきました。
ナイトさんと私はしばらくその場に黙って立っていました。
「そういえば・・・今日は末日でしたね」とポツリとナイトさん。
「ですね」
「宜しかったら、あなたもフレ登録いいですか?」
「もちろんです。お願いします^^」
こうして私のリストには新たなフレが2人登録されました。
一人は恐らくもうログインしない彼女。
そしてもう一人はその彼女を介して「常連」というだけで繋がったナイトさん。
彼女の最後の旅をご一緒する事が出来て本当によかった。
彼女は決して「倉庫」や「バザー係」なんかじゃなくて、
ちゃんと彼女のヴァナでの人生を歩んでいた・・・
"リアルも頑張って下さい。" ─お店の常連客 より
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