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2024/11/21 19:54 | Comments(-) | TrackBack(-) |
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毎日がスペシャルデー
クロウラーの巣で負傷してしまった彼女。
傷が癒えた後、戦いの勘を取り戻す為にバタリア丘陵へと出向いた。

油断をすればまた自らが再び倒されかねない虎たちを、
ひそかに鍛えている両手棍を使って倒していく。

自身の手に感覚が戻るのを感じながらも、重い足取りで彼女はジュノの街へと戻って行った。
上層の街をモグハウスへと歩いていく途中でふと目につく看板があった。

〜毎日がスペシャルデー〜

(そういえば、以前にこの街に来た時に店に入ろうとして断られたんだっけ・・・。)

彼女は店の扉の前に立った。

本日:女性限定の日/マーブルブリッジ

マーブルブリッジへ
「いらっしゃいませ」
静かな店内に静かに響く女性の声。

ジュノの喧騒とうらはらにガランとした店内。
日頃、三国を拠点に活動する彼女は、この街にくると人の多さに酔いそうになる。
しかしこの店はとても静かで穏やかだった。
中は想像よりもかなり狭く、他の客も・・・いないようだ。

彼女はチラッと店にある酒を一瞥した。

何があるかしら?

あまり酒の種類は多くなさそうだったが、質の良いものを揃えているようだ。
そのまま店の奥にあったジュークボックスに目をやる。
随分と古いもののようだった。

「いらっしゃい お客さん初顔だねぇ」
店の雰囲気とは少し合わない風体の男が彼女に声をかけた。どうやらマスターらしい。
彼女の返事も待たずにマスターは続けた。
「初めて来たお客さんにはうちの店からプレゼントがあるんだ。
こいつを持っているとお客さんがお店に入れる日に、
店から連絡がいく仕組みになってるんだぜ?便利だろ。」

「ごめんなさい。せっかくだけど必要ないわ。」
「大丈夫大丈夫、場所はとらせないからさ!」

そう言ってマスターは彼女にそのプレゼントだというコースターを押し付けた。

彼女は渋々受け取りながら一番奥へと進み、テーブルについた。

一杯ちょだい

「このお店で一番強いのを一杯ちょうだい」

マスターは静かにカクテルを作り始めた。
シェイカーを振る音が店内に響く。
その小気味良い音を聞きながら、彼女は頭を抱えていた。

どうもここの所、ツキがない様な気がする。
つい先日も、一日に三度も大怪我をしてしまい、
三度目にはとうとう他人の助けまで借りるハメになった。
昨日だってそうだ。クロウラーの巣で負傷した。

「はい、おまたせ ローレルクラウンだ」
置かれたショートカクテルを見て、彼女は思わず言った。
「私は一番強いのをお願いしたのよ。それにこんな甘口のカクテルじゃ・・・。」

「お客さん疲れてんだろ?こいつはナイトキャップにも最適なんだ。
これ飲んでベッドに横たわればあっという間に夢の中さ!」

普段は切れ味の良い酒を好む彼女には甘すぎるカクテルに彼女は難色を示した。

「まぁ、いいから飲んでみなって 女性は甘いくらいがちょうどいいんだぜ?」

ニヤッと笑ってマスターはまた自分の居場所に戻る。
静かにグラスを上げて飲んでみると、想像よりも後味が悪くない事が分かった。

ふっ・・・彼女は小さく微笑んだ。なんとなく気持ちが和らぐ。

「マスターはどうして限定したお客しか入れないの?」
彼女は問い掛けた。

「人は誰だって"特別"って響きに弱いのさ。だけどVIPしか入れない酒場なんてつまんないだろ?
だから日替わりで色んな人に"特別"をプレゼントしてるのさ。」
そういうとニヤッとマスターが笑いかけた。

「そう・・・でも皮肉ね。その特別をプレゼントしてる人は毎日同じ事の繰り返しだなんて。」

飲みすぎるなよ

「繰り返し?とんでもないな。
うちは毎日がスペシャルだ。毎日酒を作っているが日常だなんて思った事ないねぇ。
昨日来た客は酒を注文するどころかグレープジュースを注文していた。
こんなスペシャルな事があるかい?
その前にはこんなちっこいお客さんが一人でやってきてね。
山ほどマトンのローストを買って行くんだ。ウィンダスにいる母親に届けるんだってね。
この酒場に入って来て、ちょっとした会話をする。
きっと明日お客さんがココに来ても同じ会話はしないだろ?
うちもスペシャルを貰ってるんだよ。」

「なによ・・・スペシャルスペシャルって・・・おめでたい人。私は毎日同じ繰り返しよ。」
マスターに呆れつつつぶやいた。

「お客さんも自分の経験を振り返って見るといい。
うちの店の隣の坊や。この間まで頑なに人に助けを請う事をしなかったのに、
昨日はお客さんに心を開いて助けを求めていたじゃないか。
これまでの街でもそんな事は沢山あったろう?」

彼女は思い返していた。冒険者としてこの世界にやってきた日の事。
最初は門番にさえ相手にされなかったドラギーユ城も、今では自由に歩けるようになった。
街に行けば親しげに話しかけてくる仲間もいる。

「今日一緒に冒険した仲間が明日も同じとは限らない。
必ずいるとも限らない。そうだろ?だから毎日を大事にするんだ。特別なんだ。」
マスターはなおも熱弁を続けていた。その横でマスターをそっと制する店の女性。

「・・・。」
彼女はこの店に入った時にもらった「コースター」に目をやった。
不要なものだからとこっそりテーブルに置いて帰るつもりだった。

「ごちそうさま」
マスターは彼女を目で追った。マスターに向かって彼女は小さく微笑むと、
「今日はもう休むわ。カクテルなかなか美味しかったわよ。」
そう言って出口へ向かってゆく。

出口の前で彼女は一度立ち止まって言った。
「ありがとう。コースター。」

「また来るわ。」

そう言って、彼女は扉を開けた。

また来るわ


「ご来店ありがとうございました。」
来た時と同様に静かな女性の声が彼女を喧騒へと送り出す。

彼女はすっとのびをすると、軽い足取りで街の中へ消えていった。





今日はログインしていなかったので、
昨日初めて入る事が出来たジュノ上層の「マーブルブリッジ」を舞台に物語調に書いてみました。

ここに初めて入ると「MBコースター」いうものがもらえ、
自分が上層にいる時に、お店に入れる状態だと知らせてくれます。
中は非常に簡素ですが、調度品などは凝った作りをしています。
※実際の「マーブルブリッジ」にはお酒は販売されていません。

マスターと話すと、その時々に入店の限定をされた
種族、ジョブ、性別、国籍に応じて、ちょっとした台詞を聞く事が出来ます。
ジョブの話などを聞いていると、話を合わせるのが上手な親父という感じです。

文中のカクテル「ローレルクラウン」は、
ブランデー、トロピカルヨーグルトリキュール、ブルーベリーリキュール、
アイリッシュクリーム、生クリームをシェイクしたもの。
「月桂冠」の名が示すとおり、上に月桂樹の葉をアクセントにのせる事があります。
このような比較的濃厚なカクテルは、
熟睡できるように飲むお酒(ナイトキャップ)に合うとされています。
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2005/08/31 00:00 | Comments(0) | TrackBack() | [FFXI]-ショートストーリー
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